裁判の真っ最中という時に起こった忍の笑いに周囲は驚く。
「被告、静かにしなさい!」
  裁判長の叱責も、忍には届かない。
「そうか……国はどこまでもいじめ被害者への人権は無視か……弱者を叩き、強者を守るか……ハハハハハ……くだらない!まったくくだらない世界だぜ!」
「被告!黙りなさい!」
「ハハハ……俺はバカだった!こんな世界で生きていこうと思ったなんて!あの時自殺してりゃ良かった!本当にバカだぜ!俺ってやつはよ!」
  そう言い放つなり、忍は隠し持っていた小刀を取り出した。
「被告、何を!」
「……もういい……こんな世界に生きていたくない……そしてもう、こんな世界に生まれてきたくない……」
  疲れた顔でそう言うと、忍はその小刀で自分の喉を一突きした。
  裁判所に真っ赤な雨が降った。
  年数からすれば短い、しかし彼にとっては長い間苦しんだ人生は、こうして幕を閉じた。

  いじめに会い、苦しんでいる人が世の中には大勢いる。
  ひどい仕打ちを受けているというのに、ただ泣き寝入りするしかない。
  その中から、いじめから逃れるために自殺する人も出ている。
  いじめによって人生を滅茶苦茶にされる人もいる。
  しかし、いじめから被害者を守るものは何も無い。
  いじめをした加害者の方が大きな顔して歩いていける不条理な世界だ。
  ……もう、こんな世界に生まれてきたくない……
  忍が輪廻の環をくぐり、再び転生する時には、この不条理な世界は変わっているのだろうか?
  今日もいじめられている子供達の泣き声が聞こえる……


                                   完

(この物語はフィクションです。実在の人物・団体などとは何も関係ありません。)