第一章 『ゲロ』

  その日、木下忍はバスに乗っていた。
  今日は区立H中学校二年生のスキー教室の帰りだった。
  忍は乗り物酔いが酷い体質で、気分が悪くなっていた。
  吐き気が催してくる。
  一番前の席に座っている先生に言えば、ビニール袋がもらえる。
  それをもらって吐けば、少しは気分が良くなるだろう。
  しかし、ビニール袋をもらって吐けば、みんなにバカにされる。
「イヤ〜。」
「バッチイ〜。」
  現にビニール袋をもらって吐いたクラスメートは周りから野次を受けていた。
  ……我慢……我慢だ……
  バスは後少しで学校に到着する。
  ちょっとの間だけ我慢すれば……
  忍は窓から外を眺めて必死に気分転換を図ろうとする。
  ……早く、早く学校に着いてくれ……
  忍は心の中で念じる。
  だが、次の瞬間悲劇が起こる。
「おい木下、お前何たそがれてんだよ。」
  ドン。
  ちょっとふざけたつもりだったのだろう。  隣に座っていた近藤が忍を腹を叩いたのだ。
  忍の顔色が変わる。
  その衝撃で胃の中のが逆流した。
  そして、その物は忍の口から飛び出したのだった。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
  隣の近藤と、その隣の補助席に座っていた
田中は、それを浴びてしまっていた。

 『ゲロ』